記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/01/19
- メディア: 新書
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脳は酸素や栄養不足に非常に敏感。脳の血管が詰まると、神経細胞は死んでしまう。脂肪分の多い食事を続けていると、血管の組織が破壊され詰まりやすくなる。
海馬の神経細胞=「記憶情報の管理塔」。様々な情報の収集、統合、取捨選択。記憶を作る。
■海馬の構造と神経回路(時計回り)
大脳皮質(側頭葉)➡海馬入口➡歯状回(顆粒細胞)➡アンモン角(CA3➡1野/錐体細胞)➡海馬支脚➡大脳皮質(側頭葉)
海馬中増殖するのは歯状回の顆粒細胞のみ。顆粒細胞増=記憶力増。増減の速度のバランスが大事、増える速度増=顆粒細胞増、減る速度増=顆粒細胞減。
入力された情報は海馬に1ヶ月程留まり、その中で記憶すべき情報が、海馬から側頭葉へ送られる。
瞬間的に把握して記憶できる数「七」=「マジカルナンバー7」
グループ化により記憶容量増=「チャンク化」
■長期記憶
■■陳述記憶(What is)
「潜在記憶」=意味記憶のように、自我が介入しない抽象的な記憶。知識。
「顕在記憶」=エピソード記憶のように、自分の経験が付随して意識にのぼる記憶。
何らかの状況のもと蓄えられた記憶は、状況が消えた後は知識だけが残り、意味記憶となっていく。
エピソード記憶と意味記憶は、経験と時間により、どちらにも変わりうる。
■■非陳述記憶
「手続き記憶」 =体で覚える(How to)
「プライミング(入れ知恵)記憶」
■スクワイアの記憶分類
□短期記憶 30秒~数分、7個程の小容量。
□長期記憶
エピソード記憶=個人の思い出
意味記憶=知識
手続き記憶=体で覚える物事の手順(How to)
・顕在記憶=短期、エピソード
・潜在記憶=意味、手続き、プライミング
・記憶の階層システム➡エピ・短期/意味・プラ・手続き
・海馬➡エピ・意味/大脳皮質➡短期・プラ/綿条体・小脳➡手続き
電気回路は逆流できるが、神経回路は一方通行。(➡海馬の神経回路「時計回り」)
「脳の可塑性」=あるきっかけで変化、変化を保ち続ける性質。➡神経回路の形成変化。専門的には「記憶とは、神経回路のダイナミクスをアルゴリズムとして、シナプスの重みの空間に、外界の時空間情報を写し取ることによって内部表現が獲得されることである」。神経回路は使い回す➡記憶の曖昧さ、保存情報が相互作用「連想・創造」。
記憶とは、神経回路の「変化」、新たな神経回路のパターンを作りあげること。
作家サン・シモン「感動する心を失ってはいけない。感動する心を失ったら何事もなされない」
好奇心・探究心を持ち物事を眺める➡θリズム発生・歯状回の顆粒細胞増殖・「情動」のため扁桃体働く➡海馬のLTP促進=記憶力増強➡好奇心
脳は使えば使うほどさらに使えるようになる。
効率のよい復習とは、以前の記憶が海馬に保管されているうちに、覚えたい情報をもう一度、海馬に送信してやることです。
1回目:1週間後/2回目:1回目から2週間後/3回目:2回目から1ヵ月後
覚えたその日に6時間眠る/1日6時間より3日2時間ずつ/学習したことが少し時間をおくと高度化「レミニセンス(追憶)現象」
ひとつのことを記憶すれば自然と、ほかのことの法則性を見出す能力も身につく。
「天才」とは、努力の足りない凡人の妄想によって作られた言葉。「天才」とは神によって与えられた天賦の才能ではなく、血のにじむような努力の賜なのです。
記憶力増殖=「好奇心」「努力」「忍耐力」ちょっとした「コツ」
サルトル「人間は自由でないことを選ぶ自由はない」
人生を楽しむことはまた人間に課された運命でもあると私は思います。
■記憶の段階「獲得」「固定」「再生」
「獲得」海馬がLTPを使用し情報取捨選択
「固定」完成した記憶を側頭葉に保存
「再生」意識により必要な情報の書き込まれている神経回路を発見する。前頭葉から側頭葉に神経信号が送られると記憶が再生される。前頭葉で発生した「意識」が側頭葉を刺激、記憶を取り出す。
可塑性=生体制御の変容。生体制御の崩壊(疾患)と隣接するため、生体は可塑性を与える神経組織を限局するという方法をとった。海馬が「疾患」の病巣になりやすいのはそのため(アルツハイマー病/脳血管性痴呆症/精神分裂病/糖尿病末期の痴呆症/てんかん)。
海馬には、疾患という危険因子を代償として、高次な可塑性を支持するための分子機構が施与されている。