忘却

忘れないということは、一体何だったのであろうか?それは未練か執着か、あるいは歴史主義の本質は、「忘れない」ために過去をいつでも現在化する認識の科学のことを指すのだろうか?

私には、忘れてしまったものが一杯ある。だが、私はそれらを「捨てて来た」のでは決してない。忘れることもまた、愛することだという気がするのである。

ポケットに名言を (角川文庫)寺山修司