陰陽師 7

 

陰陽師 7 (ジェッツコミックス)

陰陽師 7 (ジェッツコミックス)

 

遊戯とはいえ

囲碁は博亦(はくえき)と言い 易と出を同じくいたします

仁寿殿(じじゅうでん)に陰陽師が占いに使う式盤(ちょくばん)がありますが

方形の地盤の上に 円形の天盤ののったものです

方地は静 天円は動 動とはつまり 時の流れのことです

それは 囲碁にあっては 碁盤が静 丸い碁石が動くもの

ゆえに 玄(くろ)と白 交互にうたねばなりません

なぜなら 玄と白は 陰と陽

つまり 闇と光 夜と昼 冬と夏

これを 交互に打つことが 時の流れ そのもの なのです

碁盤も式盤も 共に宇宙の象(かたど)りです

「宇」とは無限に広がる空間を

「宙」とは永劫 つまり無限に続く時の流れを意味しているのです

 

囲碁というのは

人が普通に敵(あた)れば 手談(てもてかたらう)となり

天地を象るがゆえに 打ちようによっては 占とも呪(しゅ)ともなります

盤の上にて 呪的な手を下せば 別の場所に呪を施すことも可能です

 

囲碁が天地の象りでありますように

このたびの歌合わせも 左方 右方 陽と陰 赤と青と

めでたく対峙するように つくられています

それは 壺庭の前栽にも 行きとどいております

左方の前栽は紫色の藤花 右方には黄色の山吹

この二色は補色の関係にあり

紫は天帝の住む紫微宮であり

黄色は五行でいう中央の土であり 皇(すめらみこと)であり

ともに禁色です

琵琶でいうなら 左は紫で天を 右は黄で地を

絃(げん)は その天と地を つなぐ絃(いと)

音は その応呼で 音魂(おとだま)

ゆえに 絃(いと)もの 和琴と琵琶は

高貴なる楽器と 言われるのです

 

言祝(ことほぎ)は最上の呪(しゅ)なのだよ 博雅くん

最上の浄化だ

この道では 事に窮したら まず 褒めちぎって 祝福するにかぎる

はぁ・・・・・・

よかったじゃないか

おぬしの言祝のおかげで 忠見の名も歌も後世まで残るのだ

気をおとすなよ

他人を救って 自らは墓穴をほる・・・・・・

そのような 特殊能力のあらわれも あるのさ

しかも それは 偉業なのに 生涯 誰にも理解されることはない・・・・・・

ちぇっ

喜んでいいのか 悲しむべきなのか わからんな

まったくだ