進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/19
- メディア: 新書
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■脳の地図は体が決めている
入力された情報に応じて臨機応変に進化しうる
■脳が乗る体の構造とその周囲の環境が重要
能力のリミッターは脳ではなく体
■脳の過剰進化は、安全装置、未来への予備のようなもの
■体は脳にとっての環境そのもの
体は環境に適応する以上に進化する必要はなく、それに対し脳は過剰進化してしまった
■おそらく、ああいう時には、大きな荷物まで含めて「ひとつの体」として脳が管理してるんだろう。体の一部とみなす。その瞬間だけ、自分の体が大きくなってるってこと。
体は脳を決めているかもしれないけれど、脳も体を決めているかもしれない。その関係性がなかなかあいまいなんだね。
■世の中は三次元だが、網膜は二次元。三次元の光情報が入ってきても、網膜では次元が減って二次元に映る。脳が二次元を三次元に解釈しようとする所から錯覚が起こる。
■網膜の色識別の細胞は端の方には無いため、端の色は識別出来ない。脳の補完により色がみえるように感じる。
■意識の条件
判断できる=行動の表現を選択できる
ワーキングメモリ(短期記憶)
可塑性(過去の記憶、長期記憶)
■クオリア
ラテン語で「質」、クオリティの語源。ものの本質、美しい悲しいなど。僕らが世界を体験している実感。表現を選択できない。
■可塑性
過去の状態によって脳の状態が変わるということ。失敗から学習するとか。脳は経験を価値判断の基準に仕立てる。自己組織的な働き。
■動物には「本能」の欲求がまずあって、それを「恐怖」によってがんじがらめにした状態が「理性」ということになるのかな。しかし、「こわいから避ける」ではなく、「扁桃体が活動するから避ける」。扁桃体の神経活動によって「本能」を抑えつけるた、と言うべきだね。
■人間というのは見たものそのものではなく、そこに共通している何かを無意識に選びだそうとする。基本的に完璧な記憶は応用が利かず、役に立たない。(違う服を着た同じ人物を別人としてしまう等)鳥など下等な動物ほと記憶が正確。曖昧な記憶=人間の臨機応変な適応力の源にもなっている。
脳はあいまい性確保、特徴抽出のため、ゆっくり学習するようにしている。
あいまいだから、別々の記憶がふとつながり、新しい記憶ができる=イマジネーション(想像)・クリエイト(創造)
帰納法:脳のやり方。共通のルールを見つけ出し、一般化、「汎化」する。
演繹法:数学。絶対的ルールの下、導かれる結果はつねに正しい。
■汎化のための有利なプロセス「抽象化」
応用範囲が広い。「言語」により人間は抽象的思考が可能。意識や心は言語がつくり上げた幽霊、つまり抽象。意識・心は〈汎化〉の手助けをしている。「言葉➡心➡汎化」。人に心がある〈目的〉は汎化。人間は〈心〉を活用して抽象的な思考をして、そして周囲の環境から基底ルールを抽出して、それを未来に向けて蓄えて、応用して、環境に適応している。
■言葉のふたつの側面
・コミュニケーション、伝達のための信号・記号
・抽象的思考のための道具、考えるためのツール
多くの動物は記号的にしか使っていないが、人間は、
「言語操作」=「抽象的思考がツールとして扱うように」=「応用力・環境適応力の高い動物に」
と言えるのではないか。
■神経細胞は増殖してはいけない
体の細胞は2~3ヵ月も経つと入れ替わり、乗り物としての自分は変化している。脳はそれを排除。入れ替わらないよう、自分が自分であるために、神経細胞は増殖しない。
■神経細胞はナトリウムイオンを通すための穴を持っている。これがほかの細胞と違うところ。ナトリウムイオン自体は情報ではなく、内側マイナス/外側プラス、ナトリウムイオンが流れる程、電位差なくなる=情報。電位差の小さい部分が少しずつ横方向に雪崩のように伝わる=情報の移動。電位差が崩れる場所=スパイク・活動電位。神経の信号=電気の動き、電気の自体=ナトリウムイオンの波。
■神経繊維同士の近接したその周辺=シナプス。神経細胞は絶縁体のため、活動電位(スパイク)がくると、シナプスの袋から「神経伝達物質」が放出され、情報が伝えられる。
「神経伝達物質」=ドーパミン・セロトニン・アドレナリンなど。分かっているだけで100種類位ある。/グルタミン酸=アクセル、GABA=ブレーキ。情報にバラエティが出る。
■ヘブの法則
活動電位(スパイク)の起こるタイミングが重要。ふたつの神経細胞が同時に活動したことをNMDA受容体が感知すると、カルシウムイオンが流れ、グルタミン酸の受容体が増える=シナプスの結びつきが〈強まる〉。
□NMDA受容体
多い=記憶力よくなる
ない=ものを覚えられない
□ABふたつ同時、Aが微妙に(20ミリ秒位)先=結びつき強まる。しかし、Bが先=結びつき弱まる。もしランダムであればプラマイゼロだが、ABABABときたら結びつきが強まるなど、学習スピードが速くなる、同じ繰り返しのパターンがあり、ヘブ則はそういった隠れたルールを抽出するためにある。
■人の脳は〈柔軟性〉を生むため、発達した
■脳とコンピュータの違い=自発活動の有無
脳は、「身体」が与えられ、定常性が無く、自発的変化を受容し、また変化していく。脳の機能構造の自発的変化=「脳の非エルゴード性」。脳は、外からの刺激を受けずとも常に活動。常に変わってゆく。