反オカルト論

反オカルト論 (光文社新書)

反オカルト論 (光文社新書)

・本書のスタンス。人類が「論理的・科学的・倫理的」に築いてきた成果を「学=反オカルト」とすれば、その対極に位置する「非論理・反科学・無責任」な妄信を「欺瞞=オカルト」とみなす。
・奇術師は、ありとあらゆる手段を尽くして人を騙すのが仕事だからね。クルックスやドイルのような「イギリス紳士」が、幼少期から躾けられた「フェア精神」や「品格」に邪魔されて、想定することさえできないような方法を平気で使った。
・知識人、科学者こそが騙しやすい。科学者は合理的な考えを持ち、合理的な世界ばかりを体験してきている。ところが手品の方法は非合理的で、科学者が全く体験しないような種類のものなのだ。
・STAP事件で最初から最後まで不思議でならないのは、小保方氏の周囲では「お花畑」現象が生じて、なぜか周囲の行動もチグハグになることなんです。
まさにオカルトじゃないか!
・たとえば実験室に薬品Aというラベルの容器があれば、そこには薬品Aが入っているのが合理的で、薬品Bが入っているはずがないだろう?
合理性の信頼関係に基づいて成立するのが科学。その信頼関係を根底から覆して、平気で中身を入れ替えるのが「魔術」の手法だ。そして科学者はいったん「魔術」にかかると、一般人以上に信じ込んでしまう。
もし誰かが容器の中身を入れ替えたら、それは「悪意」。
・なんと驚いたことに、小保方氏は、自分を「イエス・キリスト」に譬え、担当編集者を「聖女ヴェロニカ」に譬え、キリスト復活を連想させる「あなたは必ず甦ります」と名付けられた題名の対談に登場しているわけである!
ネットには、小保方氏が「小保方信者」を集めて「STAP真理教」を開祖するのではないかというジョークがあったが、もはや笑えない究極の「お花畑現象」が日本の現代社会で進行しているのではないだろうか。
・残念ながら「科学」と「民主主義」は万全ではないが、それ以上に優れた方法は人間社会に存在しない。限界を十分見極めたうえで、これら二つの理念を実践する「教養リテラシー」を身につけたいものである。