マルクスの心を聴く旅

マルクスの心を聴く旅

マルクスの心を聴く旅

基本的人権について、国家が国民の思想・信条、職業、転居など各種の自由を守ることを中心にした段階の憲法を「近代憲法」と呼び、国家が国民の生存、教育、労働などの「社会権」を守ることを加えた段階の憲法を「現代憲法」と呼ぶそうですが、日本社会には、これらを民衆が闘いとった経験がありません。特に国民の生存権(第二五条)、教育権(第二六条)、労働権(第二七条)、団結権(第二八条)、を国が守るという社会権については、その意味の重さも分からない。
九〇年代後半からの「勝ち組、負け組」論や「自己責任」論に、「社会権を忘れるな」「国には全国民を守る義務がある」という正面からの反撃が、ただちに起こらなかったところにも、そうした歴史の弱点が反映していると思います。
・戦前は弾圧でつぶされていたためスターリンの手が入らず、戦後はスターリンの介入で分裂させられ、その総括からスターリンに屈しない、その他誰にも従属しない「自主独立」の路線にたどりついていく。そういう体験をへて、日本の共産党は「自分のあたまで考える」姿勢を獲得していったのです。
・フランクフルト憲法の自由の条項。第九条 裁判はいかなる権力からも中立である。(この第九条は、近代を迎えて行政と司法が分離されたことを謳う、非常に重要な項目です)
・近代国民国家ドイツを言語ナショナリズムというイデオロギーから提示するだけでなく、資本主義と親和性の高い心情をも準備するという(メルヒェンの書換)、あとから見ると、グリムたちがやったことは歴史の流れのなかで大正解だったわけです。