FREE経済学入門

◾ある範囲において、複数のサイトのデータを照合することができれば、かなり詳細な個人データをとることができる。あなたが提供し、あるいは正式に登録した個人情報によって、ネットの世界の向こう側では、あなたという個人が定量的にも定性的にも、捕捉されている可能性がある。
その個人情報に基づいて、誰かが何かをあなたに売り込もうと狙っている。
◾「無料化戦略」の効果を一方的に礼賛していると、それはやがて権力者に逆利用され、ミイラ取りがミイラになるということにもなりかねない。
◾仮に、あなたがネットを通じて、過去、現在、未来、一切何も買わないという場合においても、あなたはフリーランチに対する何がしかの経済的対価を支払っていることになる。それは、あなたがそのサイトに労力と時間とわずかばかりの電気代を使ってアクセスし、フリーランチを得るためにかけた手間のコストと、何がしかの登録を行って相手に提供した情報コスト。
◾21世紀「情報のコモディティ化」。コモディティ=普及品という程度の意味、情報が入手困難かつ特別なものではなくなった。
◾情報誌=企業が宣伝したいイベントや商品の情報を一冊に詰め込んだパッケージ商品。編集者や記者の意図が入り込む余地が極めて小さい。
◾フリーランチの食材はもともとタダ。その提供者は手段さえあればもっと沢山の人に提供したいと考えていた。今よりもっと大きな収益や効果を上げることができると知っているため。ネットという手段により、以前よりも低コストで大量のフリーランチをばら撒くことが可能となっている。
◾グーグル、検索エンジン等を一般ユーザーに無料で提供し、スポンサーに対して高額なソフトやコンテンツを販売。すべてオンライン。検索エンジン事業等で得た顧客データ等を企業に提供する形態もオンライン。限界費用となる可変コストは、オンラインで届けるためのごく僅かな通信費用や電気代等を除けばゼロ。弱点は巨大サーバーの電気代。(➡️P2P(peer to peer)技術を使い、常時接続された個人のパソコン500万台に肩代わりさせれば解決?)
フリーミアム=フリー(無料)、プレミアム(割増し)
中央銀行(私企業)は、国が発行する国債と引き換えに、単に印刷するだけの紙切れを流通させ、引き受けた国債についている国債金利、つまり莫大な利子を受け取っている。
この仕組みは、まさに「フリーミアム」。
紙幣の利用料は、税金という形で国に流れ、国債の利子として国が中央銀行に払っている。
◾銀行が持っているなけなしの金を借りたのならともかく、「あると仮定して、通帳に印字した数字」に対して莫大なローンの返済を行わなくてはなりません。銀行は、顧客の通帳に数字を印字するだけで、莫大な収益を上げることになるのです。
アメリカ人は、FRB保有する国債の利払いのために、所得税を徴収されている、とさえ言われている。
アメリカ人は、自分たちが使う通貨の印刷代に対する見返りとして、毎年、莫大な支払いを請求されている。米ドルを決済通貨として使用し、外貨準備として持っている諸外国は、みな同じ境遇に置かれ、FRBに巨額のドル利用料を支払っている。
アメリカの市中銀行が銀行行に必要なドルをFRBから借りる➡️貸出金利を払う。外国の銀行が市中銀行からドルを調達する➡️金利より高い為替手数料を払う。諸外国のドル利用料➡️アメリカの市中銀行に流れ(手数料)、FRBに還流(貸出金利)。
◾こうした米ドルのカラクリは「フリーミアム」の仕組みそのもの。FRBは、国際的に信用力のある取引道具「ドル」を「無料」で普及させ、普及すれば今度は、あまねくその使用料を徴収し始める。FRBこそ、世界を対象に「フリーミアム」のビジネスモデルを仕掛けた張本人。
◾紹介スペースに大小があるのは、実はそのお医者さんが雑誌社に提供した金額によって決まっている。「名医の企画をやりますから、お金を出しませんか」。雑誌社の広告部員は、医者のニーズを汲み取り調整し、あたかも独自調査をしたかのような体裁の特集記事として提供している。
◾グーグル検索やGメールは、すでに世界を監視するパノプティコン(監獄の囚人を監視する「一望監視システム」)である。
◾「グーグル八分
◾インターネット、グーグル·Gメール=「フリーミアム
フリーミアムの対価。その狙いは、自由を制限し、奪い、彼らの思い通りに行動する人間をつくり、逆に、彼らにとって都合の悪い行動をする人間を減らすこと。
◾米軍ではすべての軍人の肩にUSIDのIDチップが埋め込まれている。負傷した場合の治療のため、万一誘拐された場合の居場所の特定というメリットはあるが、その裏側には「脱走しても一発で探す」「どこに隠れてもピンポイント爆撃で殺す」という可能性も。
◾本人の居場所を特定するためには、お金の動きを見張るよりもペットの動きを追いかけたほうが早い、そう考えてのことに違いありません。日本でも、最近、ペットにICチップを埋め込むといいことがある、という話をちらほら聞くようになりました。盲導犬には導入済み。
◾お金に縛られる人は、結局、お金に恵まれない。資本主義は、そこに参加している人々に金銭的な執着心の強さを競わせ、お金の奴隷にするシステム。多くのお金を稼ぎだしても、それは結局、税金や預貯金という形で国家に吸い上げられてしまう。それは更に日本からアメリカへ。
◾つまり、資本主義は、金銭的な執着心を植え込まれた人間が、それを競うことで得た富を、権力者がそっくり吸い上げるためのシステムということができる。
◾「フリーミアム」という無料提供システムを維持するために、個人の行動を監視してもよい、あるいは、個人が自らすすんでプライバシーを提供するべきだという社会がやってくるとしたら、私たちはそれこそ根こそぎ自由を奪われてしまうでしょう。
◾CMの最大の目的は、視聴者にいかに自分の現状を不満足に感じさせるか、という点にある。
◾物質的豊かさは、生きる目的を奪ったのではなく、生きる意義の欠乏状態をつくり出したのだ。アテネ市民はマズローの欲求段階を登っていき、科学と創造性を探求した。では、スパルタ市民が戦いを求めたのはなぜだろうか。マズローならば、自己実現欲求の一種だと言うだろう。(『フリー』クリス·アンダーソン)
◾生きるモチベーションがないからこそ、それが労働行為になるなら馬車の手綱を引こうとはせず、お金にならない芸術や哲学の世界に意味を求めるようになっていくわけです。
◾私たちが、「潤沢にあるのはたいして意味のないものばかりで、本当に欲しいもの、意味のあるものはどこを探してもないではないか」と考えるとすれば、それはすでに、労働のモチベーションを失っていることの証拠なのです。
これから流行するのは、生きる意味を見つけて上げるビジネス。アテネやスパルタの人々の芸術·哲学·肉体鍛練、現代人のブログ·ボランティア活動など、お金にならない、労働行為以外のことに人々は意味を求めている。
◾世界をこのように俯瞰してみると、「フリーミアム」の流行は、モノが潤沢にある世界を象徴する出来事。そこでは、生きる意味を与えるビジネスが最盛期を迎える。しかし、ここで注意しなければならないことは、生きる意味を与えるビジネスでさえ「フリーミアム」であるかもしれない、というリスク。その最たるものは、世界中で流行しているカルト宗教。私たちが注意を怠れば、「無料」で生きる意味が提供される代わりに、守るべき自由も、人間性も、すっかり奪われることになるかもしれない。そうした非常に高いリスクの時代を、私たちは生き抜いていかなければならない。 
◾つまり、目の前に差し出されたものが、「無料」のものであれ、非常に高価な貴重品であれ、それが自分のゴールの世界と無関係ならばいかばかりの価値もないと、脳がその情報を受けつけないわけです。
自分をこのような状態に置けば、資本主義や「フリーミアム」の仕掛けがいかに強烈であろうとも、人はその世界に取り込まれることはありません。心の隙をつかれて、自由を奪われることもないし、それによって人生のゴールを達成する力を減殺されることもないわけです。